
秘密の場所から自分だけの景色を楽しむ
開くと閉じる、を効果的に利用する
馬肉を柱とした創作料理を、南坪井町で約10年、福岡市西中洲で約10年営まれてきたオーナー夫妻から、南阿蘇を最終定住地とした、新店舗の建築設計の依頼を受けた。
まず、南阿蘇村の雄大な景色を堪能できるテラス席は必須として、それに対し店内の雰囲気をどのように演出するか。ちなみにこのオーナー夫妻はとてもセンスが良く個性的。本物志向、自然素材を使いたい、品位のある空間にしたい、などのご希望がある中、予算は限りなく厳しい。様々な条件の中から試みたのは、自分だけの秘密の場所のような雰囲気の中で、自分だけの景色を楽しむような特別感を演出すること。
店内に入り、太い木の門をくぐると、まるで洞窟の中に入ったかのような閉ざされた空間が出現する。外に出れば自由に見ることができる雄大な景観も、この中に入るとより一層特別に感じられ、額縁のように切り取られた開口部からは、時間とともに刻々と移ろう景色を楽しめる。

エントランスホール。太い木の門をくぐり、カウンター席へ

洞窟のようなカウンター席。照明は最小限に抑えている

特別席(2席)からの眺め

外壁を覆うのは板金。テラス席に木ルーバー、一部外壁に木材を使用することで、コントラストを付けている

木ルーバーのテラス席。適度に覆われた空間で、飲み物をいただきながら大自然を堪能する
予算の関係上すべて本物の素材(主に自然素材)を使うことは難しかったため、外観は板金でコストを抑え、部分的に木材を使用することでコントラストを効かせて木の存在感を引き上げることを意識しました。内観も同様に、人の肌に近い部分は本物の石や木を使用し、体から離れた部分は安価な素材を利用するなどのメリハリをつけました。
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